
ドクターショッピングとは、その病院での治療方針に納得できず、自己判断のみで病院をコロコロ変えることをいいます。
- 初診時にあまり話を聞いてくれなかった
- 処方された薬を何回か飲んだけれど、効果がわからない
- 自分が思っていた治療方針ではなかった
理由はさまざまあるでしょうが、共通の考えとして「病院は1回行けば治るもの」という考えがあるかと思います。
1回行っただけで治してしまう先生が名医で、それ以外はダメなお医者さんなのでしょうか?
そうではありません。
確かに1回行けば治るものもあるけれど、治らないものもある。
そもそも何の病気か判断するのに時間がかかるものもある。
複雑なんですね、体って。
ということで今回は、ドクターショッピングをしている人にぜひ読んでほしい1冊をご紹介します。
- 病気とはどういう状態のことか
- 誰が病気だと決めるのか
- なんで1回で治らないのか
- 病気のとき、体の中で何が起こっているのか
この記事では『どこからが病気なの?』の内容をふまえて、ドクターショッピングをしてしまう人へのメッセージをお届けします。
市原真
札幌厚生病院病理診断科主任部長。医学博士。インターネットでは「病理医ヤンデル」として有名。
目次
病気とは何なのか
具合が悪ければ病気。病院は具合が悪いのを治すところ。治療すれば具合が悪いのがよくなる。よくならなければ、最悪死ぬ。
大雑把。
まぁでも、そういうことですよね、病気って。
もちろん、本書の中でも「大雑把すぎるまとめ方」と書いてあります。
「病気ってなーに?」と聞かれたら、とりあえずこんな感じに答えておけば納得できるかと思います。
しかし、これがスタートライン。
ここから
- どこがどう調子悪くなったら病気なのか
- その状態だと将来どうなる可能性が高いのか
という話に発展していきます。
今、この瞬間がすべてではない
病気というと「どこがどう調子悪くなったら病気か」という現在軸で考えがちですが、忘れちゃいけないのが将来どうなるのかという未来のこと。
本書の中でも、未来予測とセットで考えるべきと書かれています。

●お医者さんの診断は未来予測とセット
ここでもう1つ、本書で太字で書かれている大切な部分を紹介します。
病気とは、「こないだまでの自分がうまく保てなくなること」。健康とは、「こないだまでの自分をうまく保ち続けていること」(ホメオスタシス)。
暴飲暴食とか睡眠不足とか悪い生活習慣の何がヤバいかというと、継続することでこないだまでの自分がうまく保てなくなっちゃうからなんですね。
高血圧とか脂質異常症とかの生活習慣病。
これって現在軸だけで考えると「たいして自覚症状はないし大丈夫そう」って思いますよね。
でも未来予測の考えがあると、ただでさえ経年劣化がある血管にさらに負荷をかけ続けるとどうなるか、ペタペタペタペタ脂が血管についていくとどうなるか、想像がつくと思います。
で、お医者さんはこの未来予測もした上で、現在必要な行動を選んでいます。
ここ重要。
高血圧や脂質異常症なら患者さんもお薬が処方されただけで納得しやすいかもしれませんが、これが例えば整形外科だったらどうでしょうか?
整形外科は何もしてくれないのか
ここからは本書の紹介からちょっと脱線して、ぼくが日頃よく耳にする「整形外科に行ったけど何もしてくれなかった」についてお話します。
かれこれ10年以上、体のケアをするお仕事をしていますが、本当によく耳にします。
●少し触って「はい、おしまい」ではない
例えば腰が痛くて整形外科に行った場合。
まずは問診をして、腰を反って捻ってみたり足を上げてみたり検査をしますが、それで終わる場合があります。
レントゲンも撮らず、あとはお薬を処方されておしまい。
患者さんからしてみれば「おいおいおい、おしまいかーい」と思うでしょう。
でもこれ、お医者さんがあらゆる可能性を考えた上で、お薬処方して様子見という選択をした結果です。
●話を聞いてくれない、そんなわけない
腰痛の場合、ほとんどは検査をしても異常が見つからない非特異的腰痛と呼ばれるものです。
その原因は、体の使い方の癖だったり昔ぎっくり腰を経験した記憶だったり、さまざま考えられますが多いのがストレス性のもの。
こうなると日々の生活の見直しが重要になります。
そこで出番になるのが、トレーナーだったり鍼灸師だったりするわけです。
姿勢を見たり生活習慣を聞いたり、いろいろとお話をするため患者さんからしてみたら「じっくりとやってくれるわねー」と思われがちですが、そもそも前提としてお医者さんの診断で重大な疾患がないという判断ありきの施術です。
「あれ、腰が痛いぞ」と思って最初に行ったのが接骨院や鍼灸院でも、問診や検査をして「これはまず病院で診てもらったほうがいいかな」という場合は受診を勧めます。
また、原因がはっきりわかる腰痛でも鍼灸やマッサージをすることがありますが、理学療法や薬物療法など整形外科で処方されるものを無視して受けるようなものではありません。
ちなみに鍼灸師とかも様子見をします。
うーん、なんて複雑。
そんな単純な問題じゃない
ここまでくどくどと書いてきましたが、くどくど具合からもわかるように複雑なんです、体って。
- 1粒飲めば、たちまち痩せるサプリメント
- ここをグイッと伸ばして、ほらこんなにも体が動くようになった系ストレッチ
みたいなものは、くどくど説明されるよりもシンプルで理解しやすく、利用したいのもわかります。
なるべく少ない回数で良くなるように勉強するし、経過説明も伝わるように努力しますが、上記のような「〜だから〇〇」というシンプルで断言しちゃう嘘大半ちょいホント系ビジネスに負け続けているのが地道な医療です。
一本道の診断や、瞬間的な治療といった「理想の医療」みたいなものが、地道な医療に対する不満のタネとなる。未来予測というのはそれほど簡単ではなく、行動選択にもいろいろなバリエーションがあるということを、頭の片隅に留めておいてほしい。

怖がらずに伝える
お医者さんとて人間。
相性がどうしても合わないなどで、違う病院へ行くこともあるでしょう。
しかし、何回もコロコロ変えてしまうのは考えものです。
ドクターショッピングは、現在軸だけの治療を永遠と受けるようなもの。
自分が描く理想の医療を求めさまようことは、実は自分から遠回りを選んでしまっている可能性があります。
もしも違うお医者さんにも診てもらいたいときは、現在診てもらっているお医者さんに正直に伝えましょう。
『どこからが病気なの?』を読んでみて
市原先生の医療系読み物は、紹介しようと思うと話が脱線する傾向にあるかもしれません。
恐れ多くも、読んでいてつい「あー、わかる」なんて共感した部分が今回も多かったもので脱線してしまいました。
ただ、ここまで書くのだからぼくは相当勉強しなければなりません。
勘弁してください。
おわりに
ドクターショッピングをしてしまう人にぜひ読んでほしい1冊、という願いを込めて書いてみましたがどうなんでしょうか。
というか今回読んだ市原先生の本も、とてもおもしろかった。
なぜ「どこからが病気なの?」なんてお題を医学的な説明だけでなく、一般の人もスラスラ読める内容に仕上げられるのでしょう。


実はもう1冊、市原先生の本があるのでそちらも読み直して、いずれご紹介したいと思います。
- ドクターショッピングをしている人
- 何かに偏りがちな人
- 病気に対する視野を広げたい人