なんで免疫は病原体と自分のものを見分けられるのか

もともと体の働きそれ自体が不思議なのですが、病気やケガに対する体の反応も不思議ではないですか?

風邪をひいたら熱が上がるとか。

血が出ても、しばらくしたら固まるとか。

このような、体や病気の不思議を解決してくれるのが生理学や病理学などの学問です。

病気やケガに対する体の反応を知るためには、まず体の基本的な働きについて知っておくと「あー、なるほど、だからか」なんて理解しやすくなります。

お灸さん
興味あるけど、そんな難しい本は読みたくない。
リキヤ
たしかに。

専門家でない限り教科書みたいな難しい本は読みたくないし、勉強するほどでもない。

でも、知っておくと情報を選ぶヒントになる。

そこで今回は、体の働きと病気の関係について、なかなかディープなところまで解説しているのに読みやすいという、最高の1冊をご紹介します。

この本でわかること
  • 病気の基準
  • 体の正常な働き
  • 感染症、循環障害、腫瘍、代謝障害の病態
  • 炎症とそれぞれの病態との関係

こう書いてみるとなんだか難しそうな雰囲気ですが、大丈夫です、予備知識がなくてもついていけます。

この記事では本書のなかから体を守る免疫について、ざっくりと紹介していきます。

小倉加奈子
順天堂大学医学部附属練馬病院病理診断科先任准教授、臨床検査科長。外科病理診断全般を担当し、研修医・医学生の指導にあたる。

頑張る免疫たちと炎症の関係

炎症と聞くと痛そうとか動きにくくなりそうとか、マイナスのイメージを想像しがちですが、体を守るためにも必要な防御反応が炎症です。

炎症を起こして体のなかで戦ってくれているのが、免疫細胞たち。

マンガ『はたらく細胞』でおなじみのマクロファージとか好中球とか、あの人たちです。

病原体が体のなかに侵入すると、マクロファージや樹状細胞なんかがピピーっと侵入警報を鳴らします。

リキヤ
警報物質を「メディエーター」なんていうそうです。

侵入警報が鳴らされると血管が拡張し、その場所に好中球など白血球の集団がワサワサ駆けつけます。

そこで繰り広げられるのが、免疫細胞たちと侵入者(病原体)との戦い。

白血球が侵入者を攻撃したり、死んでしまった細胞なんかをマクロファージがお掃除したり、それはもうスペクタルな戦いが体のなかで繰り広げられます。

腫れたり熱を持ったり、炎症が起こるのは血管の拡張や免疫細胞たちが頑張っている証拠だったんですね。

いやー、感謝です。

炎症が起こる原因
  • 感染症・・細菌やウイルスとの戦い
  • 組織の壊死・・ケガや血管が詰まる循環障害
  • 異物・・本来ならそこにないものの侵入
  • 免疫の暴走

なんで自分は攻撃しないのか

正常な状態の自分のものを自己、本来ならそこにないものを非自己なんていいますが、攻撃力のある免疫細胞たちはなんで非自己だけを攻撃して自己は攻撃しないのでしょうか。

攻撃しないでサイン

細胞たちが「ぼくは自己だよー、攻撃しないでー」といくら発言したところで、免疫細胞に「ウソつけ、侵入者だ」と攻撃されてしまいます。

セキュリティがすごい。

そこで細胞たちは自己だとわかるようにサインを細胞の表面にくっつけることにしました。

そのサインの名前がMHCクラスⅠ分子。

リキヤ
カッコいい名前のサイン。
お灸さん
細胞の表面にたくさんくっついている糖タンパクなんですって。

MHCクラスⅠ分子がある限りは免疫細胞に攻撃されないのですが、病原体の侵入やケガで細胞が壊れるとMHCクラスⅠ分子もなくなって免疫細胞に攻撃されるようになります。

ホント、うまいことできていますね。

暴走を抑制するシステム

体には、免疫細胞が暴走していろいろな細胞を攻撃しないように制御するシステムが備わっています。

それが、自己寛容というシステム。

人間は生まれてから獲得する獲得免疫というシステムがあるのですが、そのなかにT細胞とB細胞という免疫細胞があります。

この細胞たちが暴走すると体にとっては不都合です。

お灸さん
関節リウマチなどの自己免疫疾患ですね。

そこで、T細胞とB細胞にはちゃんと自己を認識できるかどうか、研修期間が設けられています。

もしこの研修期間中にどれが自己なのかわからない場合、「使えないね」と判断されて殺されます。

クビではありません、殺されます。

補足アポトーシスといいます。正確には自殺させられるといった感じでしょうか。

そんな厳しすぎる研修期間を切り抜けた細胞だけが現場に配属されるので、暴走せずに体を守れるというわけです。

現場に出てたとしても侵入者が現れるまではオフモードだし、制御T細胞なんていう現場監督からも待機命令が出されているため普段はおとなしくしています。

リキヤ
こんなシステムがあったんですね。

『カラダと病気の図鑑』を読んでみて

一般向けの本の場合わかりやすさに重きが置かれて、少しかじった人からすると「なんだか物足りないなあ」なんて感じることがあるのですが、本書は専門用語もしっかり出てくるしボリュームのある内容になっています。

なにより序盤に体の仕組みを解説しているのが最高です。

正常な状態をまず確認しておいてからの病態解説。

この流れだからこそ中盤以降の病態解説が頭に入りやすかったです。

病気のことを調べようと思うとその病気だけをみてしまいがちですが、俯瞰してみた方が理解しやすかったりします。

その俯瞰してみる目を本書は養ってくれます。

リキヤ
キーポイントは炎症ですね。

おわりに

本書の序盤に「この本を手にとった人のなかで医療従事者の人は多くないでしょう」なんて一文があって「え、そんなライトな感じ?」と思ったのですが全然でした。

医師からしたら当たり前の内容なのかもしれませんが、鍼灸マッサージ師としては大満足です。

リキヤ
勉強させていただきました。
こんな人にオススメ
  • 学び直しをしたい医療従事者
  • 教科書に疲れた学生
  • 健康に携わるお仕事をしている人