
「最近寂しいな・・」
「生まれ変わってやり直したい・・」
そんな風に思うのなら、細胞について覗いてみることをオススメします。
なぜなら私たちはたくさんの生物たちと一緒に生きているのだから。
ということで、今回ご紹介する本はこちら
- 細胞の中身はどうなっているのか
- 生命はどこからきたのか
- タンパク質の作られ方
- 細胞の寿命はどのくらいか


永田和宏
京都大学理学部物理学科卒業。理学博士。森永乳業中央研究所研究員、米国立がん研究所客員准教授、京都大学再生医科学研究所教授などを経て、現在、京都産業大学総合生命科学部教授、京都大学名誉教授。専門は細胞生物学。また、歌人でもある。
私たちの体に住むバクテリア

僕たちの体にはたくさんの生物が住んでいて、その生物たちのおかげでエネルギーが作られたり食べ物から栄養が吸収できたりします。

もし僕たちの体から生物たちがいなくなったらエネルギーが作られずに動けなくなってしまうし、感情にも関係しているのだったら抜け殻のような人間になってしまうかもしれません。
では、そんな働き者の生物たちはなぜ僕たちの体に住んでくれているのでしょうか?
●一緒に住むことになった物語
もともと地球は酸素のない世界でした。
しかしあるとき、シアノバクテリアという藻の仲間が繁殖していきます。
シアノバクテリアは光合成をして酸素を出し、いつしか地球は今のような酸素が豊富な星になりました。
酸素が豊富になったことにより、地球に住んでいた生物たちにも変化が現れます。
酸素に耐性を持ったバクテリアの誕生です。
あるとき、そのバクテリアが僕たちの祖先である原始真核細胞にヒョッと侵入する事件が起こります。
バクテリアは侵入した先で酸素を使ってエネルギーを出し始めます。
僕たちの祖先である原始真核細胞は、酸素によってエネルギーを出してくれるバクテリアに気を良くし、そのバクテリアが必要とするタンパク質をせっせと供給するようになりました。
バクテリアの方も「こりゃあ居心地がいい」と思い、そこに住むことにしました。
このバクテリアこそ、私たちにエネルギーを供給してくれるミトコンドリアです。

細胞は生まれ変わっている
「生まれ変わってやり直したい」なんて思うこと、人生に一度はありますよね。
でも実は知らないうちに僕たちは生まれ変わっていたんです。
●細胞の入れ替わりサイクル
平均すると1日に全細胞の2パーセントが入れ替わっているといわれますが、その割合で細胞が入れ替わり続けると、1年もたてば、私たちの細胞のほとんどは新しくなってしまいます。私という存在は去年と変わらず継続していると思っているのに、細胞レベルでみればまったくの別人ということです。
生まれ変わりたいなんて悩んでしまいますが、実は勝手に生まれ変わっていました。
ただし、神経細胞は生まれ変わりのサイクルが100年程度とされているので、毎年生まれ変わっていても悩みが尽きないのはそのせいかもしれません。
『細胞の不思議』を読んでみて
細胞の仕組みと働きについて書かれた本ではありますが、読んでいてポジティブになりました。
- ミトコンドリアはいつもそばにいる
- 自分は毎年、生まれ変われている
- 働き者の生物たちは日々頑張っている
このようなことがわかると「なら自分も頑張ろう」なんて思えませんか?
自分の目でその姿を見ることはできませんが、想像するとなんて健気な細胞たち。


おわりに
細胞について復習しようと思って読んだ本なのですが、なんだか励まされる本でもありました。
ただ細胞についての情報を羅列しているのではなく、その仕組みが物語調で書かれていたり「細胞が毎年生まれ変わっていて、私という存在はいったいなんなのか」といったように哲学的な部分があったり、想像がしやすいように書かれています。
キム・イェオンさんの挿絵も癒し系で、全体的に柔らかい印象の本に仕上がっています。

実は細胞たちはいつでもそばにいてくれて、僕たちを支えてくれています。
この本を読み終えると「あー、ひとりじゃないんだな」なんて感じられるかもしれませんよ。
- 細胞生物学の初心者
- 細胞が日々どんな働きをしているか知りたい人
- 生命の始まりを知りたい人
- 寂しさを感じている人