
「教科書ほどではないけれど、体の構造について網羅している本はないかな・・」
解剖学とか生理学とか、それぞれの教科書を読めば体について知ることができます。

そう、教科書って面白くないんですよね。
勉強したり調べものをしたりする場合は必要ですが、読み物としてはつまらない。

そこで出会ったのが今回ご紹介する1冊。
- 体の構造と、それが失われるとどのような不都合が起きるのか
- 病気になる経緯
- 医学の歴史を作ってきた発見の数々
- 身近にある危険
- 医療現場で使われる道具
これらの内容を教科書のような情報の羅列ではなく、読み物として作られたのが『すばらしい人体』です。

この記事を書くちょうど数ヶ月前に親知らずの抜歯で局所麻酔をしましたので、この記事では『すばらしい人体』の中から麻酔について、少しだけ紹介します。
山本健人
外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。運営する医療情報サイト「外科医の視点」は開設3年で1000万ページビューを超える。Yahoo!ニュース個人、時事メディカルなどのウェブメディアで定期連載。
全身麻酔の三要素
全身麻酔はフワーっと意識がなくなって、気がついたら手術が終わっていたというイメージですが、実は意識を失わせているだけではありません。
というのも、意識を失わせるだけでは手術を行うにあたって不十分なんだそうです。
1鎮静
鎮静とは意識を失わせることです。
鎮静の目的は患者さんの苦痛を和らげること。
手術における痛みを自覚させないように意識を失わせます。
また、緩和ケアなどでも起きている状態だと苦痛な患者さんに対し、鎮静薬を調整しながら使用することもあるそうです。
2鎮痛

意識がないため痛みの自覚は無くなりますが、実は体は痛みを感じていて強いストレスとなります。
そのストレスによって血圧が上がってしまうなど、体にとって不都合が起きてしまいます。

3無動
筋肉を緩ませることで体の動きをなくすことを無動といいます。
体には反射といって無意識下でも動く機能があります。
手術では体が動いてしまうと危険なため、完全に動かなくするのだそうです。
呼吸をする筋肉も動かなくなるため、全身麻酔では人工呼吸器を使用します。
覚醒まで管理されている
全身麻酔は麻酔薬の投与をやめれば自然に目覚めるようになっています。
「どのくらいで覚醒させるか」といったことまで計画され、管理されています。
つまり、いつ目が覚めるかわからないといったことはありません。
当然、手術をする前に医師から説明がありますが、現代の麻酔は「目が覚めなかったら・・」なんて心配をする必要はなさそうです。

胃カメラで使うのは麻酔ではなく鎮静
胃カメラなどの内視鏡検査では麻酔を使って行う病院もありますが、正確には麻酔ではなく鎮静です。
鎮静だけなので人工呼吸器も必要なく、寝ている間に終わります。
ではなぜ「麻酔」と説明されるかというと、伝わりやすいからです。

このように本当は違うけれど、あえて伝わりやすいように言葉を使うことって結構ありますよね。
『すばらしい人体』を読んでみて
体の構造についての本だと、どうしても各論のものが多く勉強という意味合いが強くなってしまいます。
『すばらしい人体』は勉強にもなりますが読み物としてとても興味深い話がたくさんあり、構造を知りたいという欲求を満たしてくれました。
「これをやってみよう」というようなエクササイズ本ではないため、健康を増進させるような内容ではありませんが、雑学として覚えておくと自分の体を意識するのに役立つかと思います。
おわりに
なかなかのボリュームの本です。
大作RPGといったところでしょうか。
読むのに数十時間かかるわけではありませんが、ゆっくりと落ち着いた時間に読むような本になっています。
是非、コーヒー片手に「へぇー、そうなんだ」を体験してください。
- 体の構造の面白さを知りたい人
- 医学について興味がある人
- 雑学を増やしたい人